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ロケ先で別れて数時間、お互いに別々の仕事を終えての待ちあわせ。
去年までよしこの誕生日は私の家に彼女を呼んで手作りケーキでお祝いしていたけど、
今年は初めて外で食事しようかって事になった。
どっちが言い出したんだっけ…
よしこも19歳になることだしなんかちょっと大人っぽいお店に行ってみようなんて話。
約束の喫茶店にほんのちょっぴり遅れて現れたよしこは珍しいスカート姿。
アヤカとまいちゃんに挟まれてなんだか困ったような照れ臭そうな顔で笑ってる。
「だぁー、歩きにくいしスースーする!」
そんなこと言ってヒョイと摘んで見せるスカートの裾からチラリとのぞく白い足。
よしこの無防備すぎる仕草にドキドキしてしまう。
「そんな事言わないの!せっかくの私たちの心遣いなんだから」
「そうだよ、ごっちんとデートだって言うから気合い入れてコーディネートしてあげたのよ」
「アタシのデートに二人が気合い入れてどうすんのさぁ!?」
仲良し三人組の掛け合いは楽しそうだけどちょっと目立ちすぎ、 美人トリオの漫才?は他のお客さんの視線を集めすぎかも。
「もういいから、お前ら帰れよー」
強い口調でまいちゃんとアヤカを無理やり回れ右させるけどよしこの顔は笑ってる。
まだまだよしこを揶揄い足りない顔のまいちゃんだけど
「ごっちんの前で照れてるよっすぃー見れたからもういっか」ってアヤカに目配せ。
追い返される二人も全然悪気なく、まいちゃんがお茶目に肩をすくめて舌を出して見せながら私に笑顔で手を振る。
「じゃ、後は若い二人でお楽しみって事で」
「まいちん発言がオヤジ臭せーよ」
去り際にゲンコツ作って軽くよしこの胸辺りをこつんとたたいてニヒヒと笑うまいちゃん。
早口の英語で何か一言、大人っぽくてセクシーなアヤカは私に軽くウインク。
なんだか憎めない二人なんだよね。
「邪魔してゴメンねー」と二人が去っていくとよしこは私の向かい側に腰掛けて恥ずかしそうに身を捩る。
「あー、そんなワケでプレゼントされた」
見慣れない女の子らしい格好のよしこにドキドキしっぱなしの私。
「似合ってるカワイイよ」
そんなふうに誉めるとよしこは益々顔を赤くしてぶつぶつといいわけみたいに強引な友達のやり口を呟いている。
ひとしきり親友たちへの不満を呟いたよしこは、上目遣いで話し始める。
恥ずかしさで赤くなった顔をみられたくないのかも。
「えっと、元気だった?」
「昼間会ったばかりじゃん。」
「ほら昼間はみんないてあんまり話できなかったし」
「元気かって昼間も聞いたよ?」
「そうだっけ」
ほんの数時間離れただけなのになんとなくよそよそしい会話。
いつだって同じ、久しぶりに会うとよしこも私も緊張ぎみになる。
なんとなく、よしこのペースに合わせて私も最初から仕切り直しの挨拶みたいなことを言ってみる。
「そっちこそ変わりない?」
「19になった、今日」
「知ってるよ、二人でお祝いしようって言ったじゃん。」
「はっは…そうだよね」
バカっぽい会話だけど、なぜだか心地いい。
いたずらっぽいよしこの笑顔に一気に緊張がほどけていく私。
何年経っても変わらない、この感じ嫌いじゃないよ。
お互い忙しくて何日も会えない日が続くのは淋しいけれど、久しぶりに会う度にいつも思いだす。
初めて出会った日のこと、二人でずっと話こんだ日のこと、私を好きだって言ってくれた日のこと。
絶対に忘れない私たちだけの大切な思い出たち。
よしこも同じ気持ちだったらいいな。
よしこの頼んだコーヒーが運ばれてほんちょっぴりの沈黙。
「相変わらず3人仲いいよねぇ…」
他意無く言ったつもりだけどよしこは急にいつもの調子に戻ってニヤリと笑う。
「気になる?妬けちゃったりする?」
全然気にしない…っていうと嘘になる。
誰にも優しいよしこに翻弄されるのはかまわない、だってそんなよしこが好きだから。
でも誰かと一緒に愛されるのはイヤ、とっておきの恋は独り占めしたいじゃない。
「私、妬かなきゃならないんだ?悪いことしてるとか?」
精いっぱいの強がりもさりげない風を装えるのは二人で重ねた時間のおかげ、
涙も嘘もポケットの中に詰め込んで想い出に変えて来た私達だけの時間。
余裕あるフリで笑っているとじっと見つめてくるよしこ。
私だって時を重ねて大人になってるんだよ、そんなに簡単にボロは出さない。
視線を逸らさずに見つめ返すと、よしこが急に頬を染めてそわそわしだす。
頬のバラ色が耳に首筋にまで広がったら、今日も私の勝ちだね。
「ごっちんのいじわる…」
いいじゃない表向きくらい私の勝ちにさせてよ。
「ゴハン食べにいこ」
弱った顔をずっと見てるとホンネが出ちゃいそうだからパッと切り替えて立ち上がる。
本当はお互い顔を合わせればなんとなく気分が伝わる、そこにいるだけで安心できる。
こんなに気が合うのはよしこだけ。
こんなに気が合うのは私だけでしょ?
みんなのよっすぃーだけど取っておきの時間は私だけのものだから忘れないでね。
予約したお店に向かって歩きながらよしこの手を握る。
誰かに見られちゃうかもしれないけど今日くらいいいよね。
ちょっと驚いてるよしこは服装のせいもあってすっごっくかわいくて私は自然と笑顔になる。
誰もいない夜の道を照らす月明かりに急に素直な気持ちを伝えたくなった。
人通りの途切れた裏通りでそっと囁いてみる。
「誕生日おめでとう、そんでもって今までありがとう…」
素敵な時間をくれた18のよしこはポケットにしまって大事に想い出に変えるからね。
急に立ち止まった私に怪訝な顔しているよしこ。
その頬に素早く小さなキスをする。
「これからもヨロシクね」
19のよしこといっぱいの楽しい時間を独り占めできるように願いを込めて。
end
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