ONLY TWO PERSONS[作:名無し ヲタモダチ ]



『ありがとう』

隣にいるあなたに十二時ジャストにそう言おう。

今年も言えることが嬉しかったから、
来年も言えるようにお祈りしたら、
去年も言えたことを思い出し、心が温かくなった。




ひとみちゃんが最初にこの『ありがとう』をくれたんだよね。

「梨華ちゃん、ありがとう。」

私の誕生日にあなたがくれた言葉。
だけど、普通「おめでとう」だよね?
そんな不思議顔の私にひとみちゃんが優しく微笑んでくれて、


「生まれてきてくれてありがとう。」

って少し照れながら言ってくれた。


「梨華ちゃんの両親にもありがとうって言いたいなぁ。」

って。そんなこと言われたのはじめてで私はちょっぴり戸惑ってしまったけど、
ひとみちゃんの優しい気持ちが私に流れ込んできて幸せな気持ちになった。


「一年に一度しかやってこない誕生日をうちと過ごしてくれてありがとう。」
「一生に一度しかない十六歳の誕生日にうちの隣にいてくれてありがとう。」
「来年の今日も一緒に過ごしたいと思ってくれてありがとう。」


ひとみちゃんからたくさんの『ありがとう』のプレゼント。


「ごめん、最後のはうちの希望。」

「ううん、思ってるよ。来年もその次の年もずっとひとみちゃんにお祝いしてもらいたいもん、
 私の隣で。」

「うん。」

「ひとみちゃんのお誕生日には私が『ありがとう』って言いたいな。」

「うん、言って。うちも梨華ちゃんに言って欲しい。」

ひとみちゃんは私のおでこに自分のそれをくっつけてグリグリしてきた。
近くで見るひとみちゃんの瞳は相変わらず大きくて綺麗で大好きが溢れていた。


「梨華ちゃん、誕生日おめでとう。んで、ありがとう。」

そう言って、ひとみちゃんが優しく抱きしめてくれた。


私はこの日ほど誕生日が素敵な日なんだって実感した日はなかった。








「梨華ちゃーん。」

ひとみちゃんにほっぺをつつかれて想い出から現実に呼び戻された。

「なーに思い出し笑いしてんのさぁ。」

いつものように長い腕で抱き寄せられて現実という幸せに包まれた。


「もうすぐ十八歳だね。」
「うん、梨華ちゃんに追いつくね。」


ふたりして時計を見つめる。


時計の針が日付を超えたことを知らせる。


「ひとみちゃんおめでとう、そしてありがとう。」
「うん。今年の誕生日も梨華ちゃんと一緒に居れて嬉しいよ、ありがとう。」


十八歳になってはじめてのキスを交わす。
段々と深くなるはず‥‥、だけど。


騒がしく鳴り続けるひとみちゃんの携帯を睨みつける。


「もしもーし‥‥ありがとう‥うん、あいぼんが一番乗りだよ。」


一番は私だもん、ひとみちゃんのばーか。
嬉しそうにあいぼんと話すひとみちゃんに抗議。

そしたら、「あいぼん、ちょっと待ってて。」と言って、
ひとみちゃんに小さく手招きされた。

「ん?何?」

私のその問いにひとみちゃんは、

『チュッ』

という答えをくれた。


そんなんじゃ誤魔化されないんだから‥‥そんな抵抗も手遅れ。
私の顔はきっと真っ赤になってしまってる。
キスなんていつもしてるのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう。


今日が誕生日だから?
なんだかいつもよりひとみちゃんの横顔がオトナに見えるから?

きっと私がひとみちゃんを大好きだからだよね?



次から次にかかってくる電話やメール。

もういい加減にひとみちゃんを私に返してよ、そう言いたいけど。
みんなだっておめでとう言いたいよね、だから我慢。
だって私はずーっと一緒に居られるもん。



「梨華ちゃーん。」

ほら、ひとみちゃんが呼んでいる。


「もっとこっちおいで。」


両手を広げるひとみちゃんのあったかい胸に飛び込む。


「梨華ちゃん来年も一緒に過ごそうね。」
「来年も、その次も、ずっとずっとね。」
『ありがとう。』
『ありがとう。』



『ひとみちゃんが生まれてきたこの日にありがとう。』


お祝いの『ありがとう。』はふたりだけの言葉。
一年に二回だけ使えるふたりだけの言葉。
ひとみちゃんと私のふたりだけの言葉。


end



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