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もうすぐね、私の誕生日だよ。
一年経っちゃうじゃん、ずーっと待ってるんだよ。
ウチら二人、恋人じゃないけど
親友っていうには度が過ぎてるってみんな言ってたね。
去年の誕生日、離れるのが淋しくって
「私の事どう思ってるの?」って
思わず問い詰めるみたいに言った。
よしこはびっくり顔のまんま固まっちゃって、
涙で充血した目とおんなじくらいに
真っ赤に頬を染めて口は半開き
気を取り直すと視線をキョロキョロ泳がせて、
「そんなの…言わなくっても解ってるでしょ」
って搾り出すように呟いた。
うん、解ってるよ、
「私は世界で一番よしこが好き。」
「よしこも世界で一番私が好き。」
うぬぼれなんかじゃないハズ。
でもね、言って欲しいじゃない。
私、あの日からずーっと待ってるんだよ。
「真希ちゃぁ〜ん」
「よしこぉ〜」
二人顔を見合わせた時、名前を呼ぶ前の一瞬の間が心地良い。
「一緒の仕事なんてヒサブリだねぇ」
って笑う、その笑顔を見ただけで私の体温は1℃上昇、
ガバっとハグされたらもう1℃…逆上せちゃいそう。
よしこの側にいると、そこが何処だって私の気持ちは「いつでも恋」なんだけどな。
「こないだのテレビ見たよ」
画面の中で見たあの娘やラジオで聞いたあの娘…最近仲いいんだねって、
ヤキモチ妬いてるなんてバレるのはなんか癪だから、
平気なフリして探りを入れてみたりして。
ちょっと可愛くない私。
よしこも解っててニヤニヤしてるんでしょう?
先に収録に行ったよしこがテーブルに放りだしていった携帯電話。
頻繁に着信やらメールやら…私も知ってる彼女たちの名前。
もしかしてワザと私に見えるように置いてった?
全部解ってて私のヤキモチを楽しんでるのかな?
いつもいつも思うだけで言わなかったけど、
あんまりノンビリしてたら私どっかに翔んでっちゃうぞ…って
言ったらよしこは慌てるかな?
翔んでいく前に捕まえてくれるよね。
「あ、そうだ誕生日二人だけでお祝いしようね」
収録が一段落して戻ってきたよしこは、
他のメンバーに聞こえないように素早く耳打ち。
さり気なく、さも今思いだしたみたいな顔しちゃってさ。
ワザとそっけない感じで言うのが悔しいけど、
「二人だけ」って言ってくれたからそこは見逃してあげるよ。
だからずっと待ってる言葉、その時には絶対に言ってよね。
誕生日とか特別な日じゃなくったって私の気持ちは「いつでも来い」なんだよ。
来年も再来年も大人になってもずっとずっと二人でお祝いしたいから、
とびっきりのスペシャルなプレゼントをちょうだいね。
キラキラ光る指輪なんかじゃなくっていい、
私の指を飾るのはよしこの指だけでいいもん。
欲しいモノはたった一つ、
よしこもきっと隠し持ってる恋のオールマイティ。
たったひとつ、あの言葉を言ってくれるだけでいいの。
私からのお返しはもうずっと前から用意してあるんだから。
「私も大好きだよ…ずーっと一緒にいようね」って、
素直になってあげるから。
「楽しみにしてるからね」
「バッチリ準備オーケーよぉ、ひーちゃんにマッカセナサァイ!」
帰国子女口調でふざけてるみたいなよしこ、
まあ私も怪しいアメリカ人の扮装してるけどさ。
ちょっぴり不安になってくる…。
私の切り札、使わなくっちゃダメかな?
でもさ使ったら最後きっと私の一人勝ちだよ。
ニヤニヤ顔で余裕のポーズなんてしてらんない、
慌てて狼狽えるよしこも見てみたいかもね。
いつでも使えるけど大切に持ってる恋のオールマイティ。
そろそろ使ってもいい頃合いだよね。
私はこっそり切り札を握りしめて、
でも使わなくっても済むように、
よしこが先に使ってくれたらいいな!
そしたら私はカードを全部伏せて負けを認めてあげる。
両手を上げて降参だよ、
私はあなたに捕まっちゃったって。
寝ても覚めても私の気持ちは「いつでも恋」なんだよって教えてあげる。
だから18のお祝いに、
とびっきりのプレゼントをちょうだい。
よしこの持ってる最強の切り札、恋のオールマイティー。
ずっと待ってるたったひとつのあの言葉。
私の気持ちは準備オーケー「いつでも来い!」なんだからね。
「期待してるぞよ」
金髪カツラの髪をかき上げてウインク。
ニヤニヤしてる鼻先で「バーン」なんて指鉄砲撃って、
私もよしこの真似して余裕の微笑み。
本当の勝負のその前にちょっとだけ先制パンチ、
よしこの耳元でそっと囁いてみようかな。
『今年の誕生日も忘れられなくしてよね』なーんてね。
どんな顔するか見たい気もするけどやっぱりやめておく。
誕生日当日のお楽しみに取っておくよ恋の切り札と一緒にね。
end
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