こどもの時間[作:名無し ヲタモダチ ]



控え室でテレビの中いるよしこを見る。
さっきまで同じ空間にいたのに、わたしはそこには居られない。

あいぼんがあたしの膝の上に乗ってくる。
ちっちゃく映るメンバーをみて笑ってる。

「あー。」
「えっ何?どうしたのあいぼん」
「いや、別に‥‥。」

見ると、よしことカオリの距離が近い
むぅぅー。


「むぅぅーもーみきたんのバカー」


耳の傍で聞こえたよく聞く声。
あぁそう言えばミキティと梨華ちゃんの距離も近い。


「あはは、まっつーも大変だね。」
「ごっちんも。」


お互いの相手にため息をつく。
テレビの向こうのよしこは楽しそう。



なんであたしはあそこにいないんだろう。
今日が明日だったらそしたらあたしもよしこと同じ場所にいられたのに。
隣になんか座らなくっても同じ場所にさえいられれば。


ちょっと前までよしこもこっちにいた。
年長組は大変だよねーなんて言いながら、あいぼんやののと騒いでた。
とうとう梨華ちゃんもおばちゃんチームだよーって笑った。


そしてあたしを置いてよしこは大人になった。



「後藤、一旦事務所に戻るよ。」
「えー。」
「えーじゃない、ほら松浦も用意して。」
「「はーい」」


後ろ髪ひかれる思いで埼玉を後にする。
明日は朝早い。
だから会えないねってかわりに昨日お祝いしてくれた。
会えないのは分かってる、頭では分かってる。
でもカオリの隣で笑ってたよしこの顔が頭から離れない。
十七歳最後に見たよしこの笑顔がカオリに向けられたものなんて我慢できない。


あーもう、よしこのバカ!


不機嫌顔で流れる景色を見ているあたしにマネージャーは色々言ってたけど
なにも聞こえなかった。


携帯にメールが届く。
よしこからだ。
『今日はホテルだっけ?着いたら電話して』
短くてそっけないメール。


明日は誕生日なのに、なんでこんなに楽しくないの?
やっと十八歳になれるのに
これでやっとよしことおそろいなのに。


楽しくない理由なんて決まってる
ひとつしかない
そんなのよしこが隣にいないから楽しくないんだ。


『逢いたい』が騒ぎ出す。
騒ぎ出したらとまらない。


『逢いたい』
『逢いたい』
『逢いたい』


ムカつくからメールは返さない。
『逢いたい』なんて言わない。
携帯電話越しの「誕生日おめでとう」なんていらない。


事務所で軽く打ち合わせをして空港近くのホテルにチェックイン。

午後十一時四十八分。

あと十二分で誕生日。
テレビドラマならここで恋人が飛び込んでくるはず。
でもあたしの恋人はここには来ない。

携帯が鳴った。
もちろんよしこから。


「もしもし。」
「ごっちん今何処?」
「ホテル。」
「なんで電話くれないのさー」
「・・・・。」
「なに怒ってるの?」
「怒ってないもん。」
「まぁいいけど、あのさ、それよりドア開けてくれない?」
「なに言ってんの?」
「だかーらドア、ほら早く。」


『ドンドンドン。』

ちょっと待って、本当に来てくれたの?
あたしは急いでドアを開ける
飛び込んできたいつもの笑顔。


「よしこ〜。」

だからあたしも飛び込む。

「うわっ。」

彼女はなんなく受け止めてくれる。
うわって言いながらちょっとよろけたけど。


「なんで?」
「なんで?ってメールの返事くれないしさー、機嫌悪いんだろうなーって思った
し。」
「でも、だって。」
「大変だったよ、もー。でもさ、真希ちゃんの十七歳最後の夜も十八歳最初の朝も
 他の誰にも渡したくなかったし。」
「うん。」
「泣くなって。」
「だってー。」


笑っちゃうような展開だけど、とってもベタな展開だけど
それでもあたしには最高な展開

十七歳最後の夜も十八歳最初の朝もよしこと一緒。
それでこそあたしの誕生日。


こどもの時間はもうおしまい。


今日からあたしはよしこと並んで歩いていく。
今日からあたしも十八歳。


end



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