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心も身体も溶け合ってひとつになれたらいいのにな。
そうしたらずっと一緒にいられるのに・・・
寂しい夜に震えることも、不安に押しつぶされそうになることも
みんなみんななくなるのに・・・。
明日からまた会えない日が続く。
そう思ったら寂しくて負けそうになってるアタシがいる。
なのによしこは笑ってるから
よしこはアタシのことそんなに好きじゃないのかなって
不安な気持ちが心を支配する。
すぐそばにいるのに、
ちょっと手を伸ばせば触れられるはずの距離が
何故かすごく遠く感じる。
近くにいるのに寂しいなんて
一緒にいるのに不安だなんて
どうしてそう思っちゃうんだろう。
切なくて、彼女から目を逸らしたら
うっすらと明るい明け方の空に細い月が小さく光ってた。
アタシは月に願いをかけた。
祈るように小さく呟いた言葉
「ひとつになれたらいいのにな。」
その声は眠ってるはずの君にも届いていたみたい。
「一つになりたいって・・・なんかヤらしいね。」
「そんな意味じゃないよ。バカ。」
ニヤリと笑うよしこに真っ赤な顔で答えるアタシ。
「じゃあ、どういう意味なんですか?お姫様。」
そっと身体を抱き寄せて、耳元で囁く
アタシの好きな甘い声。
「だって、そうしたらずっと一緒にいられるでしょ。
寂しさも、不安も感じないで済むもん。」
アタシの言葉にちょっとの間考え込んだよしこは
「あたしはそうは思わないけどね。」って答えた。
「え?」
「だってさ、一つになっちゃったらあたしはどうやってごっちんを愛したらいいの?」
首筋によしこの唇が這う。
それだけで身体の芯が痺れたみたいになっていく。
「どうやって真希を感じたらいい?」
細い指がアタシを快楽の海へと誘う。
苦しいくらいの波が耐えずやってくる。
ホントに溶けちゃいそうだよ。
このままひとつになれちゃいそうな感覚。
何度かの大きな波が襲った後
アタシの意識が飛んだ。
気がつけば、よしこの腕の中で
アタシの髪を愛しそうに撫でる君の柔らかい笑顔。
「・・・よしこ。」
「うん?」
何も言わずによしこの胸に頬をうずめた。
少し汗ばんだ素肌が何とも言えず気持ち良くて
だけどやっぱりひとつにはなれないんだなって
ちょっと悲しかった。
「ごっちんは何がそんなに不安なの?」
「わかんない。」
「わかんないって・・・じゃあ、あたしはどうしたらごっちんの不安を取り除けるのかな?」
「・・・抱きしめて。」
「今、よしこはココにいて、アタシのそばにいるのに・・・幸せなのに。
一緒にいられない時間のせいで心まで離れていっちゃいそうで怖いんだよ。
アタシは寂しくて死んじゃいそうなのによしこ笑ってるから・・・
きっとアタシが想ってるほどよしこはアタシのこと好きじゃないんだよね。」
しっかりと抱きしめるよしこの肩が小さく震えてる。
「よしこ?」
よしこの頬に光る1筋の涙。
そうだった、この人はいつだって涙を笑顔に変えちゃうんだ。
寂しい時も、辛い時も、一生懸命笑おうとする人だってアタシ知ってたはずじゃん。
自分の気持ちでいっぱいになっちゃって
こんな風に泣かせるまで気づかなかった。
「あたしだって不安だよ。ごっちんが離れてっちゃいそうで怖いよ。
ごっちんがいないと思うだけでどうしてこんなに寂しいんだろう。
離れただけで自分の半分どっかに置き忘れてきちゃったみたいな気がするんだ。」
本当はよしこも寂しかったんだね。
必死で我慢してたんだ。
気づいてあげられなくてごめんね。
「あたしは好きだよ。ごっちんのことすごく・・・なのに・・・。」
よしこはそれ以上涙を流さなかったけど
それが逆に痛々しかった。
上手く言葉にできない人だってアタシ知ってたはずじゃん。
誰よりも不器用な彼女の愛し方を知ってるのはアタシなのに
「ごめんね、よしこ。今わかった。きっとアタシの不安もそれだよ。」
「それって?」
「アタシの半分が離れてるからだよ。
だからひとつになりたかったのかもしれない。」
「・・・そっか。あたし達同じこと思ってたんだね。」
アタシ達は1人じゃ半分ずつ。
2人でひとつなんだ。
だけどひとつにはなれなくて
いつもどこか不安定。
一緒にいる時だけ満たされる。
切ないくらいの愛おしさを感じるのはよしこしかいないから。
だからこうして抱き合おう
2人が溶け合ってひとつになれるまで。
今度はアタシが君を溶かしてあげる。
不安も寂しさも全部溶かしてひとつになろ?
首筋を辿るアタシの舌にくすぐったそうに肩を竦ませる、君の瞳は少し潤んでて
アタシだけが見ることができるオンナの表情。
キレイな白い肌に散らす赤い花。
アタシと同じ所に同じだけ。
君と同じように愛してあげる。
アタシにしかできないことだから。
end
【有明月(ありあけづき):夜が明けて、なお空に残っている月】
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