プレゼント[作:名無しヲタモダチ]



 彼女は息を切らしてやってきた。
 日付が替わる数分前にやってきた。
 ドアを開けた瞬間、あのいつもの笑顔で

「あー、間に合った、よかったー。」

 って笑った。

「どーしたの?」
「だって、ほら、一番に言いたかったし。」
「何を?」
「えーっと、ちょっと待ってくださいね。」

 よっすぃーは携帯を取り出して何かを確認していた。

「よし。」
「ん?」

『誕生日おめでとうございます‥‥‥なっち。』

 まったく、顔を真っ赤にしちゃって可愛いなぁよっすぃーは。
 なっちって呼ぶこと、もしかして何回も練習したのかな?

「ありがとう、なっちも一番によっすぃーから言ってもらえて嬉しいよ、
あとなっちって呼んでくれたし。」

「あー、えー、ありがとうございます。」

 よっすぃーは照れて頭をかいたりしている。
 なっちも少し照れくさい、だってこんな風によっすぃーが来てくれるなんて思ってなかったから。

「なんかおかしいね、なっちたち。」
「そうですね。」

 ふたりして笑った、とてもいい誕生日の始まりだった。

「じゃ帰ります。」
「えっ?」
「えっ?」
 
 ビックリした、来たばっかりなのに帰るって言ったよっすぃーに。
 よっすぃーに帰って欲しくないって思っている自分に。

 なっちが思いっきりビックリした顔したら、それ以上によっすぃーはビックリしてた。
 そんな顔もまた可愛いなんて思っちゃったよ。

 
 
「とにかくあがって、ねっ?」
「はい。」


「おじゃましまーす。」

 部屋の奥の方で携帯電話がメロディを流し続ける、それに気付いた彼女。


「出ていいですよ、待ってますから。」
「うん。」

 よっすぃーは優しいね。
 
「したら、悪いんだけど飲み物とか勝手に出して飲んでて。」
「はーい。」

 キョロキョロしながらキッチンに向かったよっすぃーの後ろ姿見ながら、携帯を開いた。

「牛乳もらいまーす。」

 勝手に飲んでもいいのにわざわざことわりを入れてくるなんてよっすぃーらしいね。
 それにしても他にも色々ある飲み物の中から牛乳を選んだ彼女、なんか好き。

 ソファの下にちょこんと座って待っているよっすぃー。
 ごめん、ちょっと本当にワンちゃんみたいって思っちゃった。
 
 ご主人様を待つワンちゃん。
 
 それはなっちを待っててくれるんだよね、エヘヘ、いいかも。
 電話は早く切りたいんだけど、だけどよっすぃーのその姿はもう少し見ていたい、どうしよう。


 「もう少し待っててね」声を出さずにそう伝えると彼女は大きく頷いてにっこり笑った。
 

 
 その笑顔を見てなっちの真ん中がドキッて鳴った。

 もしかしたらよっすぃーにも聴こえちゃったんじゃないかと思うくらい大きく鳴った。




「うん、ありがとう、おやすみ。」

 電話を切ってよっすぃーを見るとカバンからなにやら箱を取り出していた。

「ヤグチからだった。」
 
 別に誰からでもいいはずなのに、なぜか言いたかった、誤解されたくないから。
 アレ?ヤバイよね、こんな気持ち。

 よっすぃーがズリズリと近寄ってきて『はい!』って箱を差し出した。

「プレゼントです、気に入ってもらえるといいんですけど。」

 中を開けるとごっつい皮のリストバンド。
 よっすぃーがいつもつけてるのと同じリストバンド。
 
「前に欲しいなって言ってたから。」

 確かに一度だけ言ったことがある、あんななんてことない会話をよっすぃーは覚えててくれたんだ。

「安倍さんにはちょっとハードかな?とも思ったんですけど。」
「ううん、気に入ったよ、ありがとう。」
「吉澤とおそろいは嫌かもしれないですけど。」
「嫌じゃないよ、むしろ嬉しいよ。よっすぃーとおそろいなんて皆に羨ましがられるね。」

 本当に嬉しかった。
 でもね、よっすぃー、こんな風にされると期待しちゃうよ?

「えーっと、あのー。」
「ん?」

 よっすぃーモジモジしてる、可愛い。

「えっと、あー、クソッ、さっき練習してきたのに。」

 ブツブツ繰り返すよっすぃー。

「どした?」

「あー、あの、安倍さん。」
「はい。」

「‥‥‥抱きしめてもいいですか?」


「・・・・・。」



「あーごめんなさい、いいです、はい、すいません、忘れてください、あの、か、帰ります。」

 よっすぃーが立ち上がろうとしてる、どうしよう、帰っちゃう。
 違うよ、違うの、忘れないよ、なんで謝ってるのよっすぃー。


「あ、安倍さん?」


 気付いたときにはよっすぃーを抱きしめてた。
 
「いいよ。」

 声がかすれてうまく出なかった。
 
「抱きしめてもいいよ。」

 そう言ったらすぐによっすぃーの長い腕に包まれた。
 よっすぃーはとても、とても甘い香りがした。

「安倍さん、ずっと好きでした。」
「なっちでしょ?」
「はい?」
「さっきはなっちって呼んでくれたのに。」
「‥‥はい、えー、なっちのことがずっと好きでした。」
「なっちもだよ。」

 どんなプレゼントよりも嬉しい言葉。
 あとで一緒にケーキ食べようね。
 でももうちょっとこのままでいてね。

 こうして私の22歳がはじまった、よっすぃーの隣ではじまった。
 



end



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