制服天国〜吉澤君バージョン お弁当編



「ごっちんも一緒に食べようよー、美貴いっぱい作って来たし」

「あの…私のお弁当もたくさんあるから」

ミキティと梨華ちゃんに挟まれた格好のよっすぃーは「いや、参ったなぁ」なんて言いながらも顔はニヤけてる。

なんで?なんでこんなトコに1人で突っ立てるのよ私!




そもそも言い出したのはよっすぃーなのにさ。

「コンビニ弁当ばっかで味気ねーんだよなぁ」

法事だか何かでご両親が実家に行っちゃってて部活があるからって1人だけ留守番してるって言ってさ。

「明日の土曜さぁ、一日中練習なんだけど昼飯またコンビニだよ」

そんな事言いながら私をチラっと見たりして。

「誰か作ってくんないかな…弁当」

なんか淋しそうに言うから、作ってあげようかななんてさ。

「マジ!?やったー!絶対友達に羨ましがられるよ!」

あんまり期待しないでよ、って言ってる側から上機嫌ではしゃぐよっすぃー。

「ちょ、ちょっと!友達に見せびらかす気じゃないでしょうね?」

喜んでくれるのは嬉しいけど、それはちょっと恥ずかしすぎる。

「なんでー?いいじゃん、彼女の手作り弁当なんて自慢するっきゃないでしょ」

ちょっと冗談じゃないよー、私そういうの苦手ダメダメ!
その後「やめて!」「やめない!」でちょっと口げんかみたいになっちゃった。
そんなに大した問題じゃないって思ってるのについムキになって最後は

「そんな事するならお弁当なんて作らない」

って言ってしまった…うん、確かに言ったけどさ。


本気なんかじゃなかった、だから今朝は早起きしてむちゃくちゃガンバってよっすぃーの好きな物たくさん入れて超スペシャルなお弁当作ったんだよ。
期待しないでって言ったけど、そりゃ…ねえ、やっぱ美味しいって食べてほしいじゃん。

お弁当づくりに熱中する余り時間を忘れちゃって、お昼ギリギリにグランドに到着。
そしたらそこには…梨華ちゃんとミキティがいた。
まあね、ミキティはよっすぃーと同じ学校だし土曜に練習があるって知ってても不思議じゃない。
梨華ちゃんはミキティに誘われたのかな。
二人とも…ううん私も含めて三人、中学の時からよっすぃーに片思いの仲良しグループだった。
今は私はよっすぃーとつきあってるけど、二人にはなんだか悪い気がして言い出せずにいるから、こういう状況で顔を合わせるのはとっても気まずい。

「なんだ、結局三人揃っちゃったじゃん」

ミキティの面白がってるみたいな口調に内心冷や冷やする。

「私も今来たの…美貴ちゃんが居るんでビックリしてたんだ」

梨華ちゃんはミキティに誘われたワケじゃないらしい。

「お弁当たくさん作ってきたからよっすぃーと四人で食べようよ」

手にした大きなバスケットをよいしょと持ち上げながら梨華ちゃんが笑う。
お弁当?…私が作らないって言ったからよっすぃーが梨華ちゃんに頼んだの?

「えー、美貴もベーグルサンド作って来たのに…ま、いっかみんなで食べれば」

ミキティまで?
朝からの浮かれモードは一気に急下降。


「なんだぁ三人揃っちゃって、お前等ホント仲いいな」

沈んでく私の気持ちと正反対に能天気に笑いながら午前の練習を終えたよっすぃーが駆け寄って来た。
「よう!」なんて梨華ちゃんとミキティの横をすり抜けて私の前で立ち止まる。

「弁当さぁ…」

よっすぃーが言いかけた時ミキティがバッグから紙袋をとりだした。

「どうせ今日もコンビニ行く気だったんでしょ、美貴の特製ベーグルサンドだぞ」

「あの…私もお弁当作って来たの」

梨華ちゃんもミキティに負けじとバスケットを持ち上げる。
差し出された二つのお弁当。

「え?あー、サンキュ」

そう言いながらも私をチラっと見るよっすぃー。
催促するような視線を避けて目を伏せる、こんな状況で私のお弁当なんて出せないよ。
黙ってうつむいている私をしり目にミキティと梨華ちゃんはよっすぃーを引っ張って芝生の上にシートを広げ始めてる。

「ごっちんも早くおいでよ!」

梨華ちゃんが呼んでくれるけど私はうごけない。
仲良し三人組だけど…よっすぃーと付きあってる事内緒にしてる私が悪いんだけど、
でも今は二人の作ったお弁当をよっすぃーと一緒に食べる気にはなれない。

「あの…ゴメン私用事思いだしたから」

それだけ言うのが精いっぱい、一生懸命料理してた今朝の自分がバカみたいに思えて、滲んでくる涙を見られまいと三人に背を向けて足早に歩き出す。
とにかくその場を離れたかった。


人気の無い体育館裏は陽も当たらなくってちょっぴり肌寒い。
昇降口の階段に腰掛けて食べてもらうあての無くなったかわいそうなお弁当をとりだした。
捨てちゃおうかと思ったけど食べ物を粗末にしちゃいけないよね。
自分で作ったおかずをほお張りながらついついグチっぽくなってしまう私。

「なによ、鼻の下伸ばしちゃってさ。いくらお弁当が欲しいからって普通他のコに頼む!?こっちは早起きして頑張っちゃってるのに何考えてるのよ…よっすぃーのばか!」

文句言って半べそかいて食べたお弁当はちょっぴりしょっぱくて、あんなに頑張ったのにあんまり美味しくない。
わかってるよ、私が悪いんだよね。
作らないって言っちゃったんだもん。
でもさ、だからって梨華ちゃんやミキティに頼まなくたっていいのに…。

怒りと哀しみにまかせて二人分のお弁当を無理やり食べ終わる頃には素直じゃなかった昨日の自分に後悔がいっぱい。
なんか食べ過ぎて気持ち悪いし本格的に泣きそうになっちゃう。


「あーーーーー!!」

もう早いトコ家に帰ろう、そう思った時いきなりの大声で跳び上がる程驚かされた。
慌てて目元をトレーナーの袖で拭う…泣いてるの見られちゃったかな。
よっすぃーはちょっぴり不機嫌そうに近寄ってくると空になったお弁当箱に目を落とした。

「なんだよ、弁当あるじゃん!ごっちん一人で食べちゃうなんてヒデーよ!」

『ヒデー』のはどっちよ?ミキティや梨華ちゃんと楽しくランチしてたハズじゃないの?何でこんなトコに居るの?

「あ〜あ、ホントに全部食べちゃったの?一人で?何で取っておいてくれないかなぁ」

そんな事言ってるけど口元に食べかす付いてるよ。

「ミキティと梨華ちゃんのお弁当食べたんでしょ、もういいじゃん!」

よっすぃーが私を探してこんな体育館裏まで来てくれたのホントはすっごくうれしいのに素直に言葉が出ない、意地っ張りだった昨日の自分に後悔したばかりなのにね。

「せっかく持ってきてくれて断るの悪いから食べたけどさぁー、やっぱごっちんの弁当食べたいじゃん」

ちょっと怒ってるみたいだった口元が緩んでやわらかい表情が覗く。
私の手からお弁当箱を取り上げるよっすぃー。

「昨日も昼休み菓子パンなんかかじってたからさ藤本のやつ可哀相と思ったみたい…石川はウチの親今いないの麻琴に聞いたんだってさ」

そういえばよっすぃーのイトコのまこっちゃんは梨華ちゃんの高校の後輩だって言ってたっけ…そっか、よっすぃーが頼んだワケじゃなかったんだ。

「って言うかぁ…マジに全部食べちゃったんだ」

本気で残念そうに肩を落としたよっすぃー。
ゴメンね勝手に勘違いして意地張って。

「うん…あのゴメ…」

今度こそ素直に謝ろうと思ったのにいきなり息が掛かるほど近づいてきたよっすぃーの顔に驚いて言葉につまる。
………。

今の何?突然の事でぼう然。

「へへ…ケチャップ味」

自分からしといて顔を真っ赤にしたよっすぃーがぺろりと舌を出す。

「明日も練習あるんだ…だから予約」

うん、確かにご予約承りました、だよ。

「びっくりしないでよ、すっごい美味しいヤツ作っちゃうんだから」

照れ隠しにセカセカとお弁当箱をかたづけながら言う。

「うん…やっぱごっちんのが一番美味しかった」

なんで食べてもいないのに…って、言いかけて意味が解って今度は私が赤面。
もう…そういうのやめて欲しい恥ずかしいよぉ。
でもね、よっすぃーの顔見てたら私の中に詰まってた素直になれなかった自分を後悔する気持ちがいつの間にか消えてたの。
だからねすっごく恥ずかしいけど今日はがんばちゃう。

「探しに来てくれてアリガト…」

二人分のお弁当以上にねよっすぃーの笑顔でお腹いっぱいになっちゃった。
ごちそうさま…明日も明後日もずーっとその笑顔で私をいっぱいにしてね。


end


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