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昨日はコンサート前の最後のオフで久しぶりに一日中二人っきりで過ごした。
そのままウチに泊まったよっすぃーと今朝は一緒にレッスンスタジオへと向かう。
ちょっと早く出て来たから遠回りだけど公園の中を通って行こうって意見が一致した。
まだ、朝早いから人のほとんど居ない公園の遊歩道でちょっとしたお散歩気分。
「今年は桜はやいよねー」 そう言いながら急に小走りになって少し先へ行ったよっすぃーは道端の桜の木の周りをクルリと一回りしてすでに散り始めている花を見上げてる。
昨夜の雨で少し湿った石畳に点々とはりついている花びらを踏まないようにしているのか、踊るようなステップのよっすぃー。
「…あ?あー春だね」
アタシは桜に凭れてニコニコしてるよっすぃーに一瞬見とれてしまって、どうでもいいことを言ってしまう。
桜の木とよっすぃー、一枚の絵を見てるみたいに綺麗だったから。
「うん、春だね」
アタシが追いつくとよっすぃーは木の下を離れてまた二人で並んで歩く。
「去年もそうだったんだけど、春っていうと考えちゃうコトがあるんだ」
「あ、あたしのコトでしょ」
「うん、よっすぃーが『娘。』のオーディションを受けたコト」
「当たりだぁ!」
まあ、春に限らずアタシの頭の中はよっすぃーのコトで一杯なんだけどね。
「ん、それでぇ。合格して『娘。』に入ったコト」
「うん」
自分の予想が的中したコトが嬉しいのか、はしゃいだ声でよっすぃーが相づちを打つ。
これ以上、よっすぃーを喜ばせるのがちょっとシャクで言おうかどうしようか迷ったけど続きを待っているようなよっすぃーの表情に言葉を続ける。
「それと…、今ゴトーと居ること」
「………」
言葉の続きを待ってるそぶりだったのに、いつの間にか話なんて聞いてない風でニヤニヤしながらよっすぃーはアタシの肩に腕をまわしてきた。
よっすぃーの顔がスッと近づいてきて唇が頬に触れそうになる。
「だからぁ、ゴトーが言いたいのはさ…。」
こんな道端で何考えてるの?…って、何も考えてないなその目は。
すんでのトコロでよっすぃーの唇をかわして話しを続ける。
「変わっていくコトとか、新しいコトに踏み出すとか、不安なもんじゃん。でもさ、恐がるコトないんだなって。」
よっすぃーの頭の中にはきっと?マークが飛び交ってるんだろうな。
「卒業しちゃうメンバーがいて、新メンバーが入って…って淋しかったり戸惑ったりするけどさ、『モーニング娘。』が変わり続けるグループじゃなかったら、ゴトーたち会えなかった。」
キスをはぐらかされた唇は少しばかり不満そうにキュッと結ばれたあと、一つ息をついてから独り言のような言葉を漏らす。
「ごっちんて、ときどき無意味に前向きだよねー。」
肩に回っていた腕をほどいたよっすぃーは、アタシの前に回り込むとそのまま少しあとじさってから大きな瞳を更に見開いてじっと見つめてくる。
大きめのバッグを胸の前に抱えて視線だけを動かしてアタシの頭の天辺からつま先までなぞるように眺めると、
「うん、イイね。前向きなごっちん、カワイイね。」
とワケの解らないことに納得したように、一人頷いてニヤニヤ笑い。
なんだかふざけてるみたいなよっすぃーの態度にちょっとだけムッとしたけど、アタシは話しを続けた。
「だからさ、五期メンバーが入ってきて少し不安だったけど…、よっすぃーがまたキョロキョロしちゃうってイヤだったけど、そんなコトよりゴトーとよっすぃーも、もっとイイ方に…もっと幸せな方に変わっていけばいいんだって思うことにしたの!!」
最後の方はなんだか恥ずかしくてつい語気が荒くなってしまった。
よっすぃーの唖然とした表情に頭の中に飛び交ってたであろう?マークが今度は激しく暴れ回ってるのが見えるようで急に可笑しさが込み上げてくる。
吹き出しそうになるのを必死にこらえながら、アタシは突然そうしたくなった。
だから素直にホップ・ステップ・ジャンプって飛び跳ねるようにして大好きな人の胸にダイヴ!
突然アタシが胸に飛び込んだものだからちょっと動揺したみたいだったけど、よっすぃーはちゃんと受け止めてくれた。
「アタシも前向きになろ!」
よっすぃーの前向きって……。
さっきまでアタシのほっぺを狙ってた唇は標的を変えたみたいだった。
こんな道端でって、またちょっと思ったけどさ…
今度はアタシもはぐらかしたりしないからね、もっと二人幸せになろうね。
春も夏も秋も冬も、いつだって大好きだよ!よっすぃー。
end
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