年下の女の子



あー、なんでカオリこんな所につっ立ってるんだろう。
そりゃ帽子にサングラスで完全防備だけど、なんていったってここは人が多すぎる。
さっきから、そこの女子高生グループがこっちをチラチラ見てる。
ヤバイよ気付かれてるよ絶対。

「ねぇ、彼女ぉ一人?」
女子高生に気をとられてたら反対側からいきなり声をかけられる。
うわ、何この人?これってナンパっていうやつ?
こんな所で人待ち顔で立ってるんだもの待ちあわせに決まってるでしょ!
微妙に顔を背けて聞こえないフリ。
でも、ちょっとイケメン…貼り付けたみたいな笑顔がいかにもうさん臭いけどね。

イケメンはカオリが背けた顔をのぞき込むみたいにしながらスッと何かをさしだした。
名刺?みたい。
「学生さん?いいアルバイトあるんだけど話だけでも聞いてみない?」
え…っと、これって何かのスカウト?
カオリ一応は…っていうかけっこう売れてる芸能人だと思うんだけど、この人全然気付いてないよね、なんか自信なくしちゃう。

出された名刺をじっと見つめて黙っていたら、いきなり横から割り込んできた手がその名刺をサッとさらっていった。
「お兄さぁ〜ん、これってキャバクラ?……もしかしてAVだったりしてぇ、いやぁ〜ん」
いかにもわざとらしくブリッコ風な作り声に大げさな仕草…はっきり言ってキショい。
「……あ、もしかして彼女の友達?あれだったら二人一緒でもいいよ、よかったらそこの喫茶店でお茶でも飲みながらさ、話いい?」
イケメンは突然の事で呆気にとられていたみたいだったけど、流石にプロ(?)めげることなく気を取り直してもう一度作り笑顔を張り付け直す。

…で?この後どうするつもり?
ちゃんと考えてあるんでしょうねぇ、よっすぃー?
ホラ、アンタが目立つような事するからさっきの女子高生たち近づいて来ちゃった。

「ぶぁ〜っかじゃん?こんなのついて行くわけねーだろっ!」
言うが早いか、よっすぃーは名刺をイケメンに投げ返す。
と、カオリの腕を掴んだかと思うと
「走るよ!」
え、ちょっと待って待って…


どこをどう走ったんだか、よっすぃーに引っ張られる腕が自由になったのは小さな公園、
繁華街からちょっと入っただけの場所にこんな公園があるなんてカオリ知らなかったな。
「もう、ボーッとしてるから変なヤツに声かけられるんじゃん」
よっすぃーが約束の時間に遅れたのが悪いんでしょ!って言い返したいけどまだ息が切れてて声にならない。
息を整えようってしゃがみ込んで、ずり落ちて来たサングラスを外して睨みつける。
「なんですかぁ?デートの相手にはそんな顔しない方がいいぞ、一発で振られちゃうよん」
カオリの不機嫌な視線をものともしないんだ、こいつは!
『あはは』なんて軽ぅく笑いながら腰に手を当てて余裕の表情で見下ろしてる。

「なんでそんなに意地悪いのよ!誘っといて、そんなのアリ?」
まだ脚ががくがくしてるけど悔しいから無理矢理立ち上がって詰め寄ってみる、ほら立ち上がればカオリの方が大きいから逆に見下ろしてやるんだ。
「えー、だってカオリ可愛いんだもん、ついかまいたくなるっていうかぁ」
かまいたくなるぅ!?四つも年下のくせして生意気だぞ!
「だいたい今日は何で呼び出したりしたワケ?しかもあーんな人目につくところで待ちあわせなんて何考えてるのよ!」
楽屋でふざけあうのとは訳が違う、正体がバレて囲まれたりしたら大騒ぎになっちゃうって解ってるのかしら。

「カオリが言ったんじゃん」
「?」
「自分から誘えないから誘ってくれるの待ってるって言ったじゃん」
そう言えばそんな事言ったかも…。
「時間前に来たんだけどさぁ、キョドってるカオリがあんまり面白いから観察しちゃったよ、人の多いトコで待ちあわせて正解だねっ」
困ってるカオリを観察するためにあんなトコロで待ち合わせしたっていうの!?
それに目を見開いてあっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ…それってカオリの真似?
「なによー、そんな変な顔してないよ!」
殴る真似して怒って見せたら、よっすぃーは「イヤーン」なんて女の子キャラで逃げていく。

すべり台に駆け登って舌を出してるよっすぃーにちょっぴりマジにキレかかって鬼ごっこみたいに追いかける。
狭い公園の中をチョロチョロとすばしっこく逃げ回るよっすぃー。
カオリだって足速いつもりだけどもうちょっとのトコで捕まえられない、お気に入りのミュールがかなりのハンデになってるし。
ジャングルジムにひょいひょいっと昇るよっすぃー、カオリが昇れないと思ってるでしょう…負けないよ。

子供サイズに合わせてあるから一つ一つの段が妙に中途半端に感じるジャングルジム。
手足を不格好に折り曲げて、なんとか上まで昇りきった途端によっすぃーは天辺から飛び降りちゃう。
悔しいー!でもさすがにここから飛び降りるのは恐い、靴だってよっすぃーはスニーカーなんだもの、ずるいよ。
どうしようかって考えながら周りを眺めてたら公園全体を見下ろす視界がちょっと楽しくって、まあいいかって…追いかけるのも疲れてきたし。

「けっこういい眺めだね」
下にいるよっすぃーに目を移すと、なにか企んでるみたいなニヤニヤ顔でこっちを見上げている。
「うん、いい眺め〜!」
なんでよ、下にいるのにその言い方。
「カオリのパンツ見えてるよーん」
怪訝な顔したカオリを指さしてよっすぃーが言う。
え!?見えてる…って。
長めのスカートだからって油断してた!大あわててジャングルジムから降りる。
登った時と一緒なはずなのに降りるスピードの早さに自分でも驚いちゃう。

カオリが近づいてもまだよっすぃーは両手を大げさにたたきながら笑ってるから、思いっ切り…っていう仕草で軽く頭をこづいてやった。
「アンタねー、一体何なのよ私の事バカにしてるの!?」
笑いすぎて涙まで浮かべてたよっすぃーは急に真顔になってカオリをじっと見つめる。
何よ!黙って見つめられたら…照れるじゃん。
「カオリの真似上手いでしょ?」
……あー、はいはい気に入ってるのねそのモノマネ、もういいよ。

ほんとに馬鹿馬鹿しくなっちゃって、軽くため息。
そしたら誘われたように、よっすぃーも小さく息を吐く、そしてちょっぴり淋しそうな笑顔。
なによ…そんな顔したってもう騙されないよ
「カオリと遊びたかったから誘ったの…人込み苦手みたいだし、公園なんかつまんないか…」
いっつもカオリをからかってばかりの唇から漏れた呟き。
憂いを含んだ表情がすごく綺麗で視線を外せない。
やだ、カオリってば何ドキドキしてるんだろう。

「楽しくないか…そっか」
俯き気味で上目遣いに見上げてくる視線に…カオリ捕まっちゃった?
「た、楽しいよ、久し振りに余計な事忘れて走り回っちゃったし」
「本当に?吉澤と遊ぶの楽しいっすか?」
途端に明るい表情で一気にテンションが上がる、クルクル変わる表情はどれも可愛いいから益々目が離せなくなる。
「楽しいよ、よっすぃーといるとカオリいつもよりリラックスしてるでしょ?」
カオリがそう言うと、さっきまでの沈んだ様子が嘘みたいにはしゃいでよっすぃーはまたすべり台の上に駆け上がる。

忘れん坊で生意気でいつもカオリの事すぐにからかってくる憎らしいヤツだけど…よっすぃーといると何も構えないでいられるのは確か。
リーダーなんだからちゃんとしなきゃって張りつめてるカオリをいつでもよっすぃーは緩めてくれる。
改めて思う、よっすぃーはカオリにとって大切な人なんだな。
不思議な気持ちが一気に沸き上がってくる。
意外と単純な自分に苦笑してみたり、そんな自分が何だか可愛いかも…ってそんな風に思ったり。
急に恥ずかしくなって見上げていたよっすぃーから無理矢理視線を剥がす。

「これからも誘っていい?いいよね?アタシはカオリといるとすっごい楽しい…好きな人と一緒なら楽しくないはずないもーん」
頭の上から振ってくる柔らかい声に視線を戻す。
今度は何?子供番組のヒーローの真似なのかしら…すべり台の上で変なポーズを決めるよっすぃー。
…ていうか、今何か凄い事サラッと言わなかった?
「ちょ、よっすぃー今なんて?」
カオリが気を取り直した時にはもうすべり台から滑り降りてブランコの方に駆け出してる。
よっすぃーカオリの事好きなの?ちゃんと聞かせてよ!

声をかける間もなくブランコに飛び乗って大きく漕ぎだし、そのまま思いっ切りジャンプ!
キャーあぶないじゃない!
次は何をする気なのかしら……あ、転んだ!
靴ひもほどけたまんまで自分で踏んづけてるじゃない…もう子供みたい。
ホント可愛いヤツめ!
ヤバイなぁ年下の女の子にハマちゃったかなカオリ。
でもいっか、よっすぃーといるとホント楽しいもん。

起き上がってお尻の辺りをパタパタはたいてるよっすぃーに近づいていく。
いきなり素直になるのは癪だから腕組みしてできるだけ余裕の表情ね。
「こんな風に遊ぶのも…けっこう楽しいから、またつきあってあげてもいいよ」
ハマらせた責任はとってもらわないと…またきっと誘いなさいよ、いつでも待ってるから。
カオリの言葉にちょっぴり頬をピンクに染めて嬉しいんだか困ったんだか微妙な表情を見せてるよっすぃーをビシっと指さす。
「次はGパンにスニーカーで来るから!条件が同じなら負けないよ!」

目の前に突きつけられたカオリの指をじっと見つめてるよっすぃー。
「…っぷ!変顔になってるよ!?」
すっごい寄り目になってて思わず笑っちゃった。
誘われたようによっすぃーもいつもの笑顔に戻る…
「なぁーにが、カオリこそ目つき悪!」
逆に指さし返される、その指がスッと迫って来てカオリの眉間のシワにコツンと触れる。
「もぉ!またそういうことばっかり言ってぇ」

再び始まる二人っきりの鬼ごっこ。
もう、結構疲れてるのにマジになって追っ掛けちゃう。
だって楽しいんだもん、よっすぃーといるとカオリ楽しいんだもん。
駆けていく背中にこっそり投げキッス。
今度はきっと捕まえてよっすぃーに鬼をやらせよう。
きっとよっすぃーになら追いかけられるのも楽しいよね。


end


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