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今日はあたしの18歳の誕生日。
ごっちんに出会ってから4回目の誕生日。
15歳の誕生日はトップアイドルと新米メンバー。
初めて見るもの聞くもの、学校や普段の生活と全然違う環境に目を回しているうち
何が何だか解らないままに過ぎてしまった。
16歳の誕生日、一番気の合う仲間…親友同士。
数日前の収録では何でだかモテモテ状態で矢口さんに抱きつかれたまでは
いつものことだったけど中澤さんにまでチューされたっけ。
みんながパーティしてくれて加護と辻の変なモノマネに笑い転げたり
すっごく楽しかったな。
17歳の誕生日は…へへ、思いだすとちょっと照れ臭い。
スケジュールの都合で楽屋でケーキとジュースだけのお祝い。
盛り上がってるメンバーの隙をついてごっちんの手を引いてこっそり抜け出した。
二人手を繋いで階段を駆け登って屋上へ、
ハアハアと息を切らしながらそのまんまの勢いで告白したっけ。
そんで18歳の誕生日、今日はごっちんの家に招待されてる。
ごっちんが卒業してからもしょっちゅう遊びに行ってるけど、
どうやら今日はスペシャルらしい。
「ごっちーん。きたよー。」
今は自分の家に帰るみたいに自然に部屋に直行だけど
初めて来た時は妙に緊張してたっけ。
ガチガチに緊張してた自分を思いだしてふっと笑いが漏れる。
「ふふふ・・・。」
ってごっちんも笑ってる?まさかごっちんも思いだし笑い…なワケないか。
「なーに笑ってんのぉ?」
「んー?別にぃ。」
何だろう、あたし今日の恰好変かな?
普段着だけど今日はちょっぴり洒落て来たつもり、でもどっかおかしい?
ま、ごっちん楽しそうだからいいや。
ほんとお陽さまみたいな笑顔だなぁ…。
ついごっちんの笑顔に見入ってしまったのが気恥ずかしくて
「変なごっちん。」
って照れ隠しでサラサラの髪に手を伸ばした。
こんなに可愛い娘があたしなんかの彼女でいいのかな…って時々思う。
幸せすぎて怖いって、こんな感じなのかな。
「よしこ、お誕生日おめでとー!」
手作りのケーキはかなり本格派。
あたしが18本のキャンドルを吹き消すと
ごっちんは早速ナイフをとりだしてケーキをとりわけてくれる。
「うーんおいしー。やっぱごっちんのケーキは最高だよ。」
『おいしい』って言うとホント嬉しそうにフニャっと笑うんだよね。
「そんなに食べると太っちゃうよ?」
言われて気がつく…3個目?
ヤベー…でも今日くらいいいよね、だってマジおいしいし。
「うっ・・・いーの!今日は特別!」
「ホントーに?」
「だって、ごっちんの愛情がたーっぷり詰まってるケーキを残すなんてできません。」
忙しいのにあたしのために頑張ってくれたに違いない。
真剣な顔でキッチンに立ってる姿を思い浮べる。
「わかってますとも。ごっちんのことならなんでもね。」
じっと見つめて真剣な顔でウインクなんかで決めてみる。
どーだ、惚れ直しただろう…なぁんてね。
って、なんでそこで笑うんだよー、よしこ傷ついちゃうよ。
「ぷっ・・・よしこほっぺにクリームついてるよぉ。」
「え?どこどこ?」
「ここ。」
クリームつけて決めたつもりになってるなんて、あー恥ずかしい。
え、え?うわぁクリームをとってくれたごっちんの顔がそのまま近づいて来て…
キス、された…目閉じる暇もないじゃぁん、うれしいけどさ。
ボーっとしてたらごっちんが小さな包みを取りだしてあたしを見上げていた。
「よしこ、これプレゼント。」
「ありがとー。」
いきなりのキスでもう充分プレゼントはもらったって感じだけど、
やっぱり嬉しい。
「開けてみていい?」
「どーぞ。」
何だろうなぁ、ドキドキしちゃうなぁ。
「うわぁ・・・」
思わず声が漏れるほど、あたし好みのピアス。
蛍光灯の光をキラキラと反射して小さな月の刻印が光ってる。
「かっけー・・・ありがとごっちん。すっごい気に入った。」
本当にうれしくって思わずごっちんに抱きついちゃった。
「気に入ってくれてうれしーよ。」
ごっちんらしいシンプルでセンスのいいピアス。
最近ピアスしない事が多かったけど、
そろそろ耳が淋しいなって思い始めてたとこだしナイスなタイミング。
「さっそくつけてみよーっと。」
似合うかな、ごっちんの見立てだもんきっと似合うよね。
「うん、すごい似合ってるよ。」
なんだかニヤけてきちゃうなぁ…
「ありがとーね。」
うん、さっきの仕返しだぁ!ほっぺにキスしちゃえ!
キスした拍子に揺れたごっちんの髪
耳元にキラリと光るピアス
「・・・あれ?」
「んぁ?」
「これって・・・。」
おー、お揃いなんだぁ!もー、ごっちんってば…
って、あれ何かちょっと違う?
「おそろだよね?でも、刻印が違うんだ・・・これ太陽?」
「・・・うん。」
何でさ、何で一緒のじゃないのさ?
「おそろダメだった?」
「いや、ダメじゃないけど・・・なんで同じ刻印じゃないの?」
なんだよー、あたしと同じ刻印じゃ嫌なのかな…
やっぱ離れてたらちょっとずつ気持ちもズレていっちゃうの?
考え出すとどんどん怖い考えになっちゃいそうだよ。
「これには意味があるんだよ。」
あたしはよっぽど暗い顔をしてたみたい。
ごっちんはあたしとごっちん自身のピアスに触れながら話しだした。
「意味?」
ごっちんにとってあたしは太陽だって。
あたしの放つ光を受けて輝く月がごっちんなんだって・・・
「だから、よしこには『月』の方を持っててもらいたかったの。」
【 離れてても、一緒にいるよ。】
ごっちんの気持ちがこもった二つの刻印。
それに気付かないなんて、やっぱあたしまだまだだなぁ・・
「そんな意味があったんだ・・・。」
ごっちんの気持ちが嬉しくて、気付かない自分が恥ずかしくて
複雑な想いに思わず俯いてしまう。
「でもね、『太陽』はごっちんだよ。あたしに光を与えてくれる人。
あたしはごっちんの言葉とか表情とか・・・
あたしにくれるそういったこと全部に揺れて
満ちたり欠けたり・・・。」
だからね、すぐに弱気になっちゃうあたしの方が『月』だよ。
ピアスの刻印一つで勝手に落ち込んでいたのに、
ごっちんの言葉一つでこんなに舞い上がっちゃうんだよ?
「・・・嬉しいんだけど。困ったなぁ。」
「うん?どした?」
今度はごっちんが複雑な顔。
太陽の刻印が入ったピアスをいじりながら
何か考え込む仕草でブツブツと独り言。
あたしにとってごっちんが『太陽』なら
あたしのピアスも『太陽』の刻印じゃなきゃってことか・・・
「やっぱ2人おそろいにしとけば良かった。」
ちょっと残念そうに呟いたごっちん。
ふっふっふ、いーこと思いついちゃった。
「なーんだそんなことか。」
自分の思いつきがすっごい素敵だったんで口を付いて出た言葉。
その言葉にごっちんが急に不安そうな顔になる。
「あーちがうよ。あたしにとってもそのメッセージはものすごく意味があるし、
大事だよ。」
あわててフォローする。
「ちょっと、ごめんね。」
あたしは自分のピアスを一つはずして、ごっちんのピアスと交換する。
あたしとごっちん、それぞれに『太陽』と『月』がひとつずつ。
「ほーら、これで『ピアスのよしことごっちん』も一緒だよ。」
太陽を隠していた雲がはれるみたいに不安な顔が眩しい笑顔に変わる。
「よしこ・・・頭いい。」
「あはは、惚れ直した?」
「うん。惚れ直した。」
「そいつは良かった。」
そっとごっちんを抱きしめる。
頬を寄せて耳元のピアスに触れそうに近づいてとっておきの魔法。
「メッセージありがとね。すごく嬉しかった。
大好きだよ・・・真希。」
ずっと言ってみたかった呼び方。
『真希』って声に出すだけで幸せになれるような・・甘い呪文。
突然名前で呼ばれて驚いたような顔であたしをみつめてるごっちん。
あたしの魔法は効いたのかな?
「アタシも大好きだよ。ひとみ。」
効いたみたい・・・でも、ごっちんの魔法の方が何倍も強い。
あたしをこんなに幸せに出来る魔法は他にないよ。
自然に近づいていく唇をとめられない、これも魔法?
18歳の誕生日は、ずっと解けない魔法にかかった記念日。
こんな素敵な魔法ならずっと掛かっていたい。
視界の端でごっちんの耳元のピアスがキラリとウインクする。
ずっとずっとあたしに魔法をかけ続けて欲しい。
これからもずっとだよ、ごっちん。
end
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