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今、アタシは夢の中にいる。
右も左も上も下も、どこを見ても真っ白で何もない世界。
目の前には天使の格好をした梨華ちゃんがいた。
「何?梨華ちゃんその格好・・・どうしたの?」
「私は梨華ちゃんじゃありません!見習い天使のチャーミーです。」
見習い?天使?チャーミー?
ツッコミどころ満載で、どこツッコんでいいかわかんないよ。
「あー・・・梨華ちゃん、コントでもやってるの?」
その格好どう見てもハロモニのコントだよ。
「私はチャーミー!ホントの天使なの!ごっちんの願いを叶える為にやって来たの。」
そんなにムキにならなくってもいいのになぁ
「1つだけなんだけど、ごっちんの願いを叶えてあげる。
さあ、何でもいいから願い事を言ってちょうだい!」
「はぁ。」
得意げな梨華ちゃん・・・もとい、チャーミーにため息をつくアタシ。
急に願い事って言われてもねぇ・・・
「私ね、今回が初仕事なの。でも絶対叶えてみせるから心置きなく言って!」
チャーミーのわくわくした感じが伝わってくる。
アタシの願いか・・・一つだけあるけど
「よしこと一緒にいたい。」
よしこが帰る背中を見送る時、電車のドアが閉まる瞬間、
寂しくって切なくって、いつも思うんだ。
「ずっとよしこと一緒にいたい。一緒の家に帰って、一緒のベッドで眠って、
一緒に暮らしたいよ。」
「わかった!チャーミーがんばる!」
アタシの願いを聞いたチャーミーは急に目の前からいなくなった。
・・・どういうこと?
見なれない風景に寝ぼけた頭がついていかなくって
しばらくボーっとしていた。
確か、アタシ自分の部屋のベッドに寝てたはずだよね?
なんでこんなバカでかいダンボールの中にいるわけ?
「にゃーんっ」
へ?今のアタシの声・・・なんか猫の声っぽくなかった?
視線を落として自分の手を見る。
・・・肉球があるよ。
あ、おもしろい、爪が出たり引っ込んだりする・・・あはははって
えええっ!?
猫?アタシ猫になっちゃった!?
なんで?どうして?
パニくるアタシに追い討ちをかけるように、雨が降り出した。
勢いよく降る雨に体温が奪われていく。
寒いし、お腹空いたし・・・ヤバイかも
このままじゃ死んじゃうよぉ
ヤだよ、よしこ助けて!
「にゃ・・・にゃ・・・。」
精一杯の声も途切れ途切れで弱々しい。
ダメかも・・・目をあける気力すらなくなった時、不意に誰かに抱き上げられた。
その腕は、酷く懐かしくってなんだかとても安心できて・・・心地よかった。
次に目が覚めた時、アタシは見慣れた暖かい部屋の中で
ふかふかのタオルに包まってよしこに抱かれてた。
「にゃーん?」
「おっ?目が覚めたか?」
アタシの顔を覗き込むと嬉しそうに笑って、
「よしよし・・・今ミルク温めてあげるからちょっと待ってて。」
アタシをベットの上に乗せると、そのまま部屋を出ていった。
猫になって身体のサイズが小さくなったせいか、見慣れた部屋なのに雰囲気が違う。
モノが溢れ返っているアタシとは対照的にキチンとしたよしこの部屋。
ベッドサイドに置かれたフォトスタンドの中ではアタシとよしこが笑ってる。
幸せそうな笑顔の自分を見てたらなんだか涙が出てきた。
アタシどうなっちゃうんだろ・・・
どうしてこうなったのかわからない。
モチロンどうしたら元に戻るのかなんてもっとわからない。
あーもうっどうしたらいいのよっ!
解決策が出てくる訳でもないので、
それ以上は考えないように、ぐでーっと伸びて寝転がった。
「おまたせ〜。」
ミルクを入れたお皿を持って戻ってきたよしこは床にお皿を置くと、
そのそばにアタシを座らせた。
ミルクを飲み始めたアタシの背中を撫でながら
「そうだ、名前決めなきゃね・・・えーっと・・・ごっちん」
「うに゛!?」
不意に名前を呼ばれて変な声が出ちゃったよ。
「そういえば、ビーグル犬によっすぃーってつけてたな。」
なんだ、名前呼ばれたんじゃないんだ。
あーびっくりした。
「うーん・・・ごっちん・・・じゃ芸がないよね。」
一生懸命名前を考えてるらしく、あーでもないこーでもないとブツブツ言ってる。
「そだ!「ごま」にしよう!」
その名前のどこに芸があるってーのよ。
心の中でそうツッコんで、でもアタシの名前を仔猫につけてくれた事が嬉しくて
「にゃーんっ」
ちゃんとお返事してあげた。
「そっか、気に入ったか。よしよし。」
満足げに笑うよしこがかわいいな。
お腹がいっぱいになったらまた眠くなってきた。
「うにゃ・・・。」
よしこに膝の上で丸くなって眠る。
いつもよりおっきく感じる手がゆっくりゆっくりとアタシを撫でてくれてて
さっきまでの不安はどこかに消えていた。
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