もしも願いが叶うなら



夢の中ではアタシは人間の姿に戻っていた。
景色は相変わらず真っ白で、そしてやっぱり目の前には梨華ちゃん。

「これでよっすぃ〜とずっと一緒だよ。願いが叶って良かったね。
 初仕事でこんなにあっさり願い事叶えちゃうなんて、私って天才かもっ!」

まさか・・・

「ちょっ、ちょっと梨華ちゃん!アタシ猫にしたの梨華ちゃんなの!?」
「チャーミーだってばっ。ごっちんのお願い叶えたのよ。」
「なんで!?猫にする必要ないじゃん。」
「1番自然にずーっとそばにいられるでしょ?」
「・・・こんな風に一緒にいたかったんじゃないよぉ」
「え?」
「人間のアタシが恋人のよしこのそばに・・・ずっと一緒にいたかったんだよ。」

まったく勘違いもイイとこだよ。

「ゴメンね、ゴメンねごっちん。」

ひたすら謝りつづけるチャーミーがかわいそうで怒る気もしなくなった。

「もういいよ、怒ってないから元に戻して。」
「・・・ゴメンねぇ〜!!」

ポロポロと涙を溢しながらアタシの手をぎゅっと握って、頭を下げ続ける。

「もういいってば。」
「・・・戻せないの。」
「は?」

今なんとおっしゃいましたか?

「叶えられる願い事はただ1つって言ったでしょ?
 もうごっちんのお願い1つ叶えちゃったから・・・。」

なんだってぇ!?

「じゃあアタシこのままずっと猫なの!?」

冗談じゃない、そんなのヤダよ!

「戻る方法がないわけでもないんだけど・・・かなり難しいかも。」
「なに?どうしたらいいの?」

難しくても何でもその方法に頼るしかアタシは元に戻れない。
どんなことだってやってみせる。

「あのね、ごっちんの1番大切な人に見つけてもらえたら魔法が解けるの。」
「つまり、よしこにこの猫がアタシだって気づいてもらえれば良いってわけ?」
「うん。」
「・・・わかった。 あと1つ聞きたいんだけど、人間のアタシの存在はどうなっちゃってるの?」

連絡も取れず目の前からいなくなったら、家族も心配するだろうし
何よりよしこが心配だよ。

「今日から1週間、仕事で海外に行ってることになってるわ。」
「そうなんだ。」

ちょっと安心した。

「あと、言い忘れてたけど、さっきの元に戻る方法って有効期限があるの。」
「有効期限?」
「うん。有効期限は1週間。その間に気づいてもらえなかったら・・・戻れなくなっちゃうの。」

マジっすか?

でもやるっきゃないんだよね。

「わかったよ。チャーミーありがとね。」
「ううん、私が悪いんだもん。本当にゴメンね。」
「大丈夫だよ。よしこはきっとアタシに気づいてくれるよ。」

正直、あの鈍感なよしこが気づいてくれるとは思えない。
ホントは自信ないけど、アタシはチャーミーを安心させるように笑顔で頷いた。





「うにゅ・・・」

現実の世界では、アタシはやっぱり猫のままだった。
膝にアタシを乗せたままのよしこが、ベッドにもたれて眠ってる。
疲れてたんだろうな
長い足を投げ出して、ちょっと口あけて、しっかり閉じられた瞳には長い睫毛が揺れてる。

「・・・ごっちん。」

よしこの寝言はアタシの名前。
どんな夢見てるんだろう?

柔らかく微笑んでるよしこの寝顔にキスしたくって近づいたら
そのおっきな瞳が突然開いて、至近距離にいるアタシにかなり驚いてた

「うわっ!? なんだ、ごまか。あーびっくりした。」
「にゃー。」

なによ、そんなに驚かなくってもいいじゃない。

「そうだよな・・・ごっちん今海外だもん、ここにいるわけないもんな。」

よしこの呟きに首を傾げたら、苦笑してた。

「ごまってなんとなくごっちんに似てるからかな?
 今、ごっちんが側にいるような気がして目が覚めたら、すっげー近くにごまがいるからさ
 マジびっくりしたよ。」

アタシを抱き上げて今度は照れた笑顔。

「ごっちんてあたしの・・・その彼女なんだけどさ、すっごいかわいいんだ。
 普段はポーカーフェースで大人っぽくいくせに、あたしの前だと子供でさ
 表情とかコロコロ変わって、見てて飽きないんだ。
 あたしはそんなごっちんにホント惚れてて、すっごい大切なんだ」

よしこ、アタシのことそんな風に思ってたんだ

まあ、アタシが猫になっちゃってるなんて思ってないからなんだろうけど
普段じゃ絶対言ってくれないようなことをたくさん話してくれて、
ごっちんには内緒だよって笑った。
ごめん、内緒にはできないな。

「今もさ、ごっちんの夢見てたんだ。
 2人でぼーっとしてて・・・ごっちんって呼んだらふにゃって笑ってくれてさ
 それだけのことなんだけど、あたしの隣りにごっちんがいてくれるだけですごい幸せなんだよね。」

どうでもいいようなことはいーっぱい喋るくせに
肝心なことはなかなか口に出してくれないから
素直な気持ちをこうやって話してくれるのが嬉しい。
アタシってとっても愛されてるんじゃん。

めったに聞けないよしこの気持ちが聞けて嬉しいから
アタシに気づいてもらうぞ作戦の実行は明日からにしようっと。

【1日目終了】





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