ルージュの伝言!?


【1】

「ちょっと…そんなに笑っちゃよっすぃーがカワイソウですよぉ」

そういう石川さんも目に涙を浮かべて笑いをこらえるのに必死である

「だって、おかしくって!これ、ごっつぁんの字だろ?もうサイコー!」

矢口さんはといえばこらえる気など全くないらしい
石川さんの肩をバンバンと叩いてバカ笑いが止まらない
当の吉澤さんは…吉澤さぁん!目がどっか逝っちゃってますよぉ
茫然自失の体でだらしなく開いた口を閉じる気力も無い様子

今日はハローモーニング。の収録日
二本撮りの一本目の収録を終えて戻った年長チーム楽屋である
一番最初に戻ってきた吉澤さんは
自分の化粧道具の置かれた鏡の前で固まっている
そこへすぐ後に続いていた矢口さんと石川さんがやってくる
固まっている吉澤さんの視線の先には
鏡にデカデカと書かれた『バカ』の二文字
二文字目の『カ』を書く時にはそぅとぅ力が入っていた様子で
文字の書き終わりに顔料が潰れたように塊がくっついている

「よっすぃー、ごっつぁんに何したの?」

石川さんが鏡の前に転がっている口紅を拾い上げる

「…はぁっ?何って、ウチ何にもしてないよぉ」

だいたいがここの所忙しい日が続いていたので
吉澤さんは後藤さんに会ってもいないのである
今日は午後からコントと「笑わん姫」の収録で会えると
二人とも楽しみにしていたほどなのだ
数日前からの電話やメールの内容を思い返しても
恋人にバカ呼ばわりされるような失言をした覚えはない

「はっはー、あれだな」

笑い転げる矢口さんには何か心当たりがある様子
石川さんの摘み上げた口紅から折れた拍子に飛ばされたとおぼしき
欠片を床の上に見つけてそれを拾い上げる

「あれ?あれって何ですか?」

原因はわからないが愛しい後藤さんは怒っているらしい
吉澤さんとしては心中穏やかなはずがない

「さっきさぁ、ごっつぁんスタジオの隅にいたんだよな」

後藤さんはコントと笑わん姫のコーナーにしか出演しない
今日は午後から参加のはずである

「さっきっていつですかっ!?」

吉澤さん、ほんのちょっぴり動揺する

「いつから居たのか解んないけどさ、
 藤本が生まれ変わるならカオリがイイって選んだ後に
 よっすぃー『俺もずっと前から』とか何とか言ったじゃん
 あの後すぐスタジオ出ていったんだよ」

「マジンガー!?」

こんなときでもふざけた口癖が出てしまう吉澤さん。
しかし矢口さんも石川さんも呆れた顔で吉澤さんを見ているだけで
「ゼーット!」と返してはくれなかった。



時間を巻き戻してみよう
場所はハローモーニング。の収録スタジオ
今日一本目の収録はモーニング娘。に新加入となった
藤本さん初登場SP藤本通選手権である
この最終決戦、吉澤さん、飯田さん、石川さんの三人から
生まれ変わったらなりたいという相手として
藤本さんが飯田さんを選んだ後の場面である

藤本さんに選ばれるものと思い込んでいた吉澤さんは
用意していたセリフを言い損ねて渋い顔
そこでやめておけば良かったのに余計な一言がこぼれ落ちる

『俺もずっと前から好きだった』

テレビカメラの前に立つと意識してなのか天然なのか
ついつい笑いを取りに行ってしまう吉澤さん
予想通り、みんなにウケたしカメラのクローズアップも勝ち取った
…が思いも寄らず余計なものまで買ってしまっていた

午前中まとめ撮りするゲームコーナーには出番のない後藤さん
急なスケジュールの変更で時間が空いたのがいけなかった
早くテレビ局に着きすぎた後藤さんは
愛しい恋人…言うまでもないとは思うが念のため言いなおすと
愛しい吉澤さんの勇姿をこっそり眺めて楽しむべく
スタジオの隅っこに地味ぃに陣取っていた

普段の恋人をひっそり観察して楽しむのが後藤さんの目的なので
当然のこと吉澤さんに見つからないよう気をつけている
安倍さんや矢口さんや新垣さんに飛びつかれて
ニヤついている吉澤さんに一瞬ムッとしかかるも
恋人が全然人気がなかったらそれはそれで淋しいかなと
気を取り直した所に件の吉澤さんの発言である

周囲の爆笑と共に後藤さんの怒りをも知らないうちに
買っていた吉澤さんであった
好事魔多しとはよく言ったものである

    

「誤解だよぉ〜、あんなの冗談に決まってるじゃん」

情けない吉澤さんの声も届けたい相手は今ここにいない
鏡に書かれた『バカ』の文字だけが虚しく吉澤さんの目に映っている

「ごっつぁん捜してちゃんと謝った方がよくない?」

さすがに友人の窮地をいつまでも笑ってもいられないと
石川さんがアドヴァイスした時には既に吉澤さんは
楽屋のドアを出ようとしている

「よっすぃー信用ねーなぁ…ま、普段が普段だからな」

ようやく笑いの納まってきた矢口さんの言葉は
廊下を駆け出す吉澤さんの耳にもう届いていなかった


吉澤さんが最初に駆け込んだのは後藤さんの楽屋
まあ順当な選択ではある
が、後藤さんもそれほど単純ではなかったということか
ドアを開け見回した吉澤さんの視線は
後藤さんを見つけることができない

さて、次は…とりあえず年少チームの楽屋である
ゲームコーナー二本目の収録も迫っているので
ノンビリしているワケにもいかない
吉澤さん、かなりの勢いでドアを開け放ち開口一番

「ごっちん来てるっ!?」

あまりの勢いに驚いた小川さんの口元から滑り落ちた干しいもが
ペタンと床に張り付いて情けない音をたてる

「あ゛〜〜」

言葉にならない声をあげて落ちた干しいもを見つめる小川さんと
よしよしとばかりにその頭を撫でつつ新しいイモを差し出す紺野さん

「ごっちんだったらさっきまでいたけど…すごいキゲン悪かったのれす」
「えらい勢いでお菓子食べてたけど、気がついたらいつの間にか居なくなってたで」

干しイモを挟んでいい雰囲気の小川さんと紺野さんを
呆れ気味に横目で見ながら辻さん加護さんが吉澤さんに教えてくれる
どうやら後藤さん、鏡に書きなぐったメッセージだけでは
収まらなかった怒りをお菓子のヤケ食いという方向に向けたようだ

「あのさ、ごっちん何か言ってなかった?」

次にどこを捜せばいいのか
藁にもすがりたい気分の吉澤さんは無駄と思いつつも
辻さん加護さんにヒントを求め尋ねてみる
しかし二人は次の収録前の腹ごしらえに夢中で反応が薄い

「あのぉ〜、後藤さんやったら『暴れてやる〜!』とか言って走ってきましたけど」

ちょうどそこへ入ってきた高橋さんが後藤さんのモノマネを交えつつ
スタジオの方を指さし辻さん加護さんの代わりに答えてくれる

「あっちだねっ!」

内心(たかはすぃ…モノマネ、似てねーよ)とツッコミを入れつつも
愛しい恋人の姿を求めて廊下に飛びだしていく吉澤さんであった

【2】


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