もしも願いが叶うなら



「じゃ、いってくんね〜!」

今日もよしこは慌しく出かけて行って
アタシはやっぱりぽつんと部屋に残された。

よしこと一緒の時間なんか全然ないよ〜

不満だし暇だし。
仕方ないので今日はよしこの部屋を探検することにした。

探検て言ったってキチンと整頓された部屋だから
アタシの部屋ほど探検のしがいがないけど。
それでも、わくわくする。

だってさー人間のアタシがクローゼットとか引出しとか見てたらやっぱ引くでしょ?
せっかく猫になったんだから普段出来ないことを満喫しないとね。

まずはクローゼットに向かう・・・あかない。
きっちり締められてるからどうにもならない。
猫って不便だ。

じゃ、机に行こう。
ご自慢のジャンプ力で机の上に見事辿りついた。
机の上に乗せられてるもの・・・数冊の教科書とハロモニの台本。
・・・他は何にもないよ。

マジで探検しがいがない部屋だなぁ。
ドレッサーの方がまだ遊べるかな?

ドレッサーの上に乗っかった拍子に
なんか落とした。

やぱっ・・・でもま、いっか
猫のやったことだもんね〜。

化粧品のビンが並ぶ以外たいした物なくって
やっぱりつまんない。

ちぇっ

諦めたあたしはベッドの上で昼寝をすることにした。
気持ちよく眠りについたところを弟君達に捕まえられて
またもや恐怖を味わうのだった。





「ただいまー・・ってうあっ!」

んぁ?

「ごまぁ、お前何やったんだよぉ。」

何って?何もしてないけど・・・

よしこはアタシが探検の際に落としたものを拾い上げて
大事そうに両手で包み込んだ。

それは小さな箱だった。

ベッドに腰掛けて箱を開けるよしこの手元を覗きこんだ。

中に入っていたのは小さな巾着袋。
よくアクセサリーが入ってるヤツだ。
紐が解かれて、中身が取り出される。
よしこの手の中で光るそれはネックレスだった。
真ん中で揺れるチャームになんとなく見覚えがあるような・・・





数ヶ月前、アタシは死ぬほど落ち込んでた。
よしこからもらった1番最初のプレゼントだった
ピアスの片方を失くしてしまったから。
必死になって探したけど、どうしても見つからなくて
よしこに申し訳なくて泣きながらあやまった。

「ごめんね・・・ごめんね・・・よしこ。」

そんなアタシの頭をくしゃくしゃって撫でて
「気にしなくていいよ。」って

よしこがそう言ってくれるのがわかってたから
余計に悔しくて涙が出た。

「でもアタシの気が済まないんだよ。」
「じゃあさ、コレちょうだい。」
「・・・いいけど。」
「ありがと。」

残ったピアスの片割れをよしこが持っていったんだ・・・





あのピアスがチャームに姿を変えて揺れてる。
優しく笑うよしこの手の中で揺れてる。

「ごっちん、喜んでくれるかな?」

さっきまで、優しかった笑顔が
急に寂しげな表情に変わった。

「海外だからしかたないけど・・・ごっちんに会いたいな。」

アタシはここにいるよ!
よしこの隣りにいるんだよ!
だからそんな寂しそうな顔しないでよ。
そう言いたいのに、今のアタシの言葉がよしこに届くことはない。

「にゃーん。」
「・・・慰めてくれるの?ごまは優しいね。」

アタシを抱き寄せる腕は同じなのに
こんなにも違く感じるのは
アタシが後藤真希じゃないから?
よしこにとってアタシは特別な存在なんだってことが
こんな風になって初めてわかるなんて・・・
絶対に元に戻って、もう一度その優しい腕に抱かれたいと
願わずにはいられなかった。

【3日目終了】





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