もしも願いが叶うなら



「はぁー ごっちんいつ帰ってくるんだろ。」
「にゃ?」
「1週間の予定だって言ってたけど、明日ホントに帰ってくんのかな。」
「うにゅ?」
「なーんにも連絡しないでさ・・・まったく、薄情者めっ」

よしこの指に突つかれた写真のアタシ。
連絡も何もアタシだってわかんないよ。

「あー早く明日になんないかなぁ。そしたらごっちんに会えるんだよね。」

いや、このまま朝になっちゃうと一生会えないんだよ
困るんだよぉ〜!!
どうしよ、どうやったら気づいてもらえるんだろ。

「うにゃ、にゃ、にゃんにゃん。」

よしこ、気づいて!アタシだよ!

「はいはい、ごまちゃんはかわいいねぇ。」

必死の訴えも通じなかった・・・

がっくりっ





どうしよう・・・どんどん時間がなくなってる
ヤバいよ
タイムリミットまであと2時間。

「・・・くぅ〜。」

え?

マ、マジでぇ!?

よしこ寝ちゃってるよ!
起きて!起きてよ!
ちょっと、このままじゃ一生アタシと会えなくなるよ?
困るでしょ!!
起きてよぉ〜

「・・・う・・ん。ごっちんってば・・・へへへ。」

幸せそうに眠るよしこは起きる気配を見せない。
声をかけたり、叩いてみたり
いろいろがんばってみたけど全然起きない。

最後の手段に訴えるしかないかな・・・・よしこごめん!!
なるべく目立たない場所にするから許して!

ガリッ

思いっきり爪を立てて引っ掻いたのに

「う・・・いてぇ・・・」

よしこは少し顔を歪めてそう呟いただけで
やっぱり目を覚ますことはなかった。

うっそぉ!!

ボーンボーン・・・

無情にも12時の鐘が鳴って
シンデレラなら解けるはずの魔法がアタシにはかかったまま。
・・・アタシ一生猫のままなのね。

終わった・・・終わったよ。
後藤真希よさようなら。
猫のごまちゃんよろしくね。

こんな鈍感バカに惚れた自分が悪いんだ。あきらめな。
いいじゃん、飼い猫だってさ。
よしこはすごくかわいがってくれるよ。
だけど、いつかアタシ以外の誰かを好きになって、結婚とかしちゃって
他の誰かの横で笑ってるよしこ見なきゃいけないんだよね。
悲しいなぁ
どんなに愛してても、かわいがってくれてても、決してアタシの想いが届くことはないんだ。
寂しいなぁ

ショックで寝込んだっていう状態なのか、アタシは倒れ込むようにそのまま眠りについた。





夢の中だとアタシやっぱり人間なんだなぁ

真っ白な世界ってことはきっとチャーミーがいるはず。
・・・なのに、チャーミーの姿はどこにも見当たらない。

遠く、遥か遠くに人影が見えた。

「きっとチャーミーだ!」

アタシはその人影の方へ走っていった。

どれくらい走ったんだろうか
汗だくで息も切れ切れで
夢でも苦しくなるんだなぁなんて変なこと感心した。

遥か彼方に見えた人影が実は2人だと認識できるくらいの距離に近付いた時に
背の高い方のシルエットがよしこであることに気がついた。

「よしこ! よしこぉ!!」

必死で走って大きな声で呼んでみたけれど
よしこはアタシに気づいてくれない。

姿がはっきりわかるくらい近付いた時にわかったんだけど、
よしこの隣にはチャーミーと同じ格好をした圭ちゃんでがいた。

なに?どうなってんのぉ〜

「ちょっと、圭ちゃんとよしこ!なにやってんの?」

近くで声をかけても返事をしてもらえない。
どうやらアタシはこの2人には見えてないみたい。
夢ですらアタシに気づいてもらえないなんてなんだか寂しい。





「で?決まった?」

圭ちゃんの言葉によしこは困ったような笑顔で答える。

「急に願い事っていわれてもなぁ・・・」
「なんでもいいわよ。このケメぴょんに叶えられない願いはないわっ!」

・・・ケメぴょん?

真っ白な世界で
しかも、チャーミーと同じ格好・・・。

なんとなくわかってきた。

これってよしこもアタシと同じで願い事1つだけ叶えてくれるってヤツだよね。
ってことは、よしこの夢の中ってこと!?

「・・・ホントになんでもいいんですよね?」
「モチロンよ!」
「じゃあ、ごっちんが幸せでありますようにって願います。」

え?

「ごっちんが幸せでいつも笑っていられますように。
 その笑顔が見れればあたしは幸せだから。」

胸に手を当てて満足そうに微笑んだよしこが言った願い事。

なんかもうじーんときちゃったよ。
ヤバイ、涙腺壊れちゃったみたい。
涙が溢れてとまんないよ。

「難しい願い事するわねぇ・・・後藤の幸せは後藤にしかわかんないじゃないのよ。」
「だって、圭ちゃんなんでもいいって言ったじゃん。」
「まぁそうだけど・・・。」
「ダメ?」
「仕方ない、本人に聞くしかないわね。
 後藤、アンタの幸せって何?どうして欲しい?」

圭ちゃんはまるでアタシがそこにいることを最初から知ってたかのように声を掛けた。
一方、よしこの方はその時初めてアタシが見えたみたいで

「・・・ごっちん?」
「うん。」

こうやって見つめあうの1週間ぶりだね。
やっとアタシを見つめてくれたね。

「ほら、後藤アンタどうして欲しいの?
 吉澤の願いだから1つだけ叶えてあげるわよ。」

「アタシの幸せはただ一つ。
 アタシが、後藤真希がよしこの側にいられることだよ。」

「ごっちん・・・ありがと。」

「・・・わかったわ。」

頷いた圭ちゃんの笑顔がだんだんと薄れていって
真っ白な世界に溶け込んでいった。





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