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【2】
ベッドの上であれこれ考えながら芋虫みたいにゴロゴロはいずり回っていたら、いつの間にか8時を回っている事に気が付いた。
ごっちんまだ戻ってないのかな…念のため戻ってきたら話があるってメール入れておこう。
送信ボタンを押してっと、ああ今のうちにお風呂入っちゃお。
お風呂の中でもなんだかぼぉ〜っと考え込んだりしてものだから、上がったときにはもう9時を過ぎていた。
…よっすぃーまだ矢口さん達と一緒なのかなぁ?
ああ、それよりお風呂に入ってる間にごっちんからメールの返信があったかもしれない。
充電器にセットしてある携帯に手を伸ばしたとき部屋のドアをノックする音がした。
あー、ごっちん帰ってきたんだ!
とにかく、早くよっすぃーのコトを話したくてドアに駆け寄る。
鍵を外して勢いよくドアを開けた。
「ごっちーん、遅いよぉ!」
私は困ったときいつもしてるようにごっちんに抱きついて泣きそうな声を出した。
…ん?なんか感触がいつもと違う。
それは…ごっちんじゃなかった。
安倍さんでもなく、矢口さんみたいに小っちゃくもなく、ましてや愛ちゃんでも中学生チームでもなく、私の悩みのタネ…よっすぃーその人。
「うっはぁ…だぁいた〜ん!梨華ちゃん意外と積極的なんだねぇ」
「!?…きゃぁ〜〜!」
ど、ど、どうしよう。てっきりごっちんだと思ったのによっすぃーに抱きついちゃったぁ。
「おとなしそうな顔してるのにねぇ。まあ、そのギャップがまたいい感じだけど」
いつのまにかよっすぃーの手は私の背中に回ってて…私の想像の中、二人で抱きあっていたイメージそのままの形になっている。
うわぁ、うわぁ…この状況をどうするの?このあとどうすればいいのぉ?
考えなくちゃ!考えるのよ、梨華!
次の展開を懸命に考えてるつもりなのに
『よっすぃーの胸ってあったかいなぁ』だの
『見れば見るほど白い肌で羨ましい』って…ああ、もうそうじゃないでしょ!
ここで、どんな行動を取るかで私に対するよっすぃーの態度だって違ってくるかもしれないじゃないの!
変な娘だって思われるのだけは絶対に避けなくっちゃ。
………!?バタンとドアが閉じる音でハッと気付いた。
うまい考えが何も浮かばない内にじりじりとよっすぃーに押しきられて、いつの間にか抱きあった格好のまま廊下から部屋の中に移動してる。
他の寮生に目撃されるのも恥ずかしいからそれはいいんだけど、どうなっちゃうの?
このままズルズルと移動しちゃったら私の背後には…。
ベ、ベ、ベッドにぶつかっちゃうよ!?
…やだぁ、別に変な意味じゃなくってぇ、行き止まりまで行ったらその後は?
また、私の頭の中によっすぃーとのありえない姿が浮かんでしまう、どんな姿かは恥ずかしすぎて言えやしない。
…って、今の何?そんなことあるわけないじゃない、何考えてるの梨華のバカバカ!
よっすぃーも私も女の子なのよー!?
頭の中の恥ずかしい妄想を追い払おうと頭を激しく振ってよっすぃーを力いっぱい突き放した。
一瞬『しまった』って思った。いくら恥ずかしいからってこんな力いっぱい突き放すことなかったって…。
でも、よっすぃーはほんのちょっとよろけただけでポカンとした表情を見せたかと思うと次の瞬間にはこらえきれないという風に笑いだした。
私にしてみればよっすぃーを突き倒してしまったんじゃないかってくらい力いっぱい押したつもりだったのに…何で笑われているのか解らなくて今度は私がポカンとする番。
「大胆かと思えば、いきなりパニクって力任せに拒絶したり…そんな自分にアセってみたり、ホント梨華ちゃんって面白い」
笑いながら私の顔をのぞき込んでくるよっすぃー。あのぉ、せ、接近しすぎだよ?
なにかっていうと顔を近づけて来る、これってよっすぃーのクセなのかな?
「別にパニックなんて起こしてないし…ちょっとビックリしただけだもん」
一つだけでも私の方が年上なんだし、余裕たっぷりなよっすぃーに何もかも見透かされてるみたいなのが悔しくて、ちょっと不機嫌を装って言い返してみる。
「あのさ、彼氏とケンカした原因もコレ?いきなり迫られてパニクっちゃった?」
よっすぃーは少しだけ真顔になって私の机の上を指さした。
そこには乱雑に散らばったノートや筆記具に混じって私のお気に入りのフォトスタンドが伏せられてあった。
ボーイフレンドとのツーショット写真入りのフォトスタンド…。
でも、どうしてよっすぃーそんなコトまで?
「何で解るのかって顔だね。梨華ちゃん全部顔に出るから、すぐ解るよ。彼のこともしっかり顔に書いてあるし」
真剣な表情も素敵だなぁ…なんて関係ないこと考えてたらよっすぃーはまたニヤニヤ笑いながら私の鼻の頭を人さし指でツンとつついて言う。
顔に書いてある…って、そんなコトあるわけないじゃないと思いながらもあわててベッドサイドに置いてあった手鏡に手を伸ばしてしまう私。
色んな角度から鏡に映った自分の顔を確認していると背後からよっすぃーも一緒になって私の肩越しに鏡をのぞき込んでくる。
「もう、ホント梨華ちゃんカワイすぎ!…そんなの書いてあるわけないじゃん」
私の肩にアゴをくっつけてよっすぃーが楽しそうに言う。
うわぁん!耳元でそんな囁かないでよぉ。
「本当はね…うん、実を言うとウチ読心術が出来るんだ。だから梨華ちゃんの考えてること全部わかっちゃうんだよね…」
ふうん、読心術かぁ…え!?読心術ってウソでしょ?
私の考えてること全部よっすぃーに筒抜けだとしたら、さっき思い浮かべちゃったアンナコトやコンナコトも?
「ダメダメー!そんなぁ心を読むなんてズルイよ」
私は鏡をベッドの上に放りだしてよっすぃーの方へ向き直る。
私の肩にアゴを乗せていたよっすぃーとの距離は思っていたよりずっと近くて、しかもタイミングよく真正面に顔を見合わせる形になっている。
よっすぃーの顔からはニヤニヤした笑いが消えて、私は目をじっと見つめられて身動きも出来ない。
「ゴメン、ウソだよ。梨華ちゃんの心が読めるなんてウソ。梨華ちゃんがウチのことどんな風に思ってるのかも全然わかんない…だからさ、教えて?」
私にはこれ以上ないと思えるくらい接近してるのに、よっすぃーは更に顔を近づけてくる。
これは、今度こそキ、キスとかされちゃう!?
やっぱ、目とか閉じたほうがいいのかな…?
そう思った時、いきなり入り口のドアが勢い良く開かれた。
そう言えば、よっすぃーが入ってきたとき鍵閉めてなかったっけ…。
「梨華ちゃん、起きてるぅ?遅くなっちゃってゴメンねぇ」
絶妙のタイミングで部屋に入ってきたのは…ごっちんだった。
3−【1】←・→4−【1】
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